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シーシュポスの神話④ 不条理な論証 哲学上の自殺

 

#不条理な論証


*l’absurd

 

 「不条理」というと難解なので、「理不尽」と直して理解に努めていたが、もっとぴったりな訳が見つかった。「ばかげた」である。これだと荒唐無稽という意味も含んでいる。

 


▶︎実存哲学の考えーシェストフとキルケゴール2人の『飛躍』

 シェストフは実存主義に通じる絶望の哲学を展開した。カミュは彼の「唯一の真の突破口は、まさしく、人間の判断するかぎり突破口など存在しない所にある。そうでなければ、どうしてわれわれは神を必要としよう。ひとが神へと向うのは、ただ、不可能事を獲得したいためにほかならない。可能事についてなら、人間でこと足りる。」という言葉にその哲学が要約されているという。

シェストフは決して「ここに不条理がある」とは言わず、「ここに神がある。たとえ神がわれわれの理性的範疇のいかなるものにも合致しなくても、なお、神に身を委ねるのがいいことなのだ」と語る。

 神の偉大さは、その矛盾にある。神の存在を証明するのは、その非人間性である。神の中へ飛び込み、この飛躍によって理性にもとづく幻から解放されなければならない、ということで、シェストフにとっては、不条理を確認することとは不条理を受け入れることである、とカミュは述べる。

シェストフは不条理を真実、あるいは贖いと呼び不条理に賛意を示しているが、カミュの考えによれば、不条理が存続するためには、不条理に同意しないことが必要である。

 カミュは、シェストフにおける神の身に委ねる飛躍は逃避だとする。不条理はふたつのものの均衡状態においてしか価値を持たないが、シェストフは一方に全部の重みをかけてしまっていると批判する。

 キルケゴールもまた飛躍を行う。彼は反抗の叫びをあげるかわりに、何ものかにすがった。彼は病から癒えることを絶望的な努力をし、これまで自分を照らし導いてきた不条理を無視し、

苦しまぎれに無理な逃げ道を考え出して、非合理的なものを神とするにいたった。

 


 これらの態度を哲学上の自殺と呼ばせていただこう、とカミュは言う。

 

 


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